コラム

特定技能の介護とは?特定技能外国人を受け入れるメリット・デメリットなどを解説


公開日:2024/9/13   更新日:2024/9/13

 

介護ニーズが高まりを見せながらも、人材不足が深刻な介護業界では、外国人介護人材の受け入れを考える事業所が増加傾向にあります

 

ただし、実際に受け入れるためには、特定技能・介護の有無が重要になります。

 

今回は、特定技能・介護の概要や特定技能外国人を受け入れるメリット・デメリットを紹介するので、ぜひ参考にしてください。


 

特定技能「介護」とは

 

特定技能とは、生産性の向上や人材を確保するための取組を行っても人材の確保が難しい産業上の分野において、専門性・技能を有する外国人材を受け入れる制度のことです。

 

介護も含めて、農業、建設など14分野において、特定技能による外国人の受け入れが可能です。

 

受け入れ対象の外国人は、介護技能評価試験と2つの日本語試験に合格した上で入国し、介護事業所で最大5年間受け入れられます。5年後には帰国となりますが、それまでに介護福祉士の国家資格を取得して、特定技能「介護」から在留資格「介護」に変更すれば、永続的に働けます

 

特定技能「介護」を持つ外国人に任せられる業務は、身体介護の他、これに付随する支援業務です。

 

例えば入浴や食事、排泄の介助といった身体介護の他、レクリエーションの実施や機能訓練の補助などを行えます。ただし訪問系サービスは対象外です。

 

特定技能外国人の雇用形態は直接雇用に限られており、派遣などの雇用形態は認められません。また労働条件も、報酬額や労働時間などを日本人と同等以上にする必要があります。

 

介護事業所で受け入れられる特定技能1号の外国人の人数は、事業所単位で日本人等の常勤介護職員(雇用保険被保険者)の総数が上限です。

 特定技能「介護」制定の背景



特定技能「介護」が制定された背景には、日本の深刻な介護人材不足があります。

 

日本は急速な高齢化に直面しています。内閣府が発表している令和6年版高齢社会白書によれば、日本の総人口における65歳以上人口の割合(高齢化率)は29.1%になりました。

 

また2040年には34.8%、2065年には38.4%に到達すると見込まれています。このような人口構造の変化に伴い、介護サービスに対する需要は今後高騰すると推測されています。

 

一方で介護業界は慢性的な人手不足となっているのが現状です。

 

厚生労働省のWebサイトに記載されている、介護関係職種の有効求人倍率の推移によれば、令和元年をピークに低下傾向にあるものの、令和2年の有効求人倍率は3.99倍、令和3年は3.65倍となっており、高い水準となっています

 

また令和4年6月時点での全職種の有効求人倍率の平均は1.31倍であることから、介護関係の求人倍率よりもかなり高いことが分かります。

 

単純な比較は難しいものの、介護業界では人手が足りておらず、介護職員の過重労働や介護サービスの質の低下につながる恐れがある状況です。

 

こうした背景から、日本政府は2019年4月に改正入管法を施行し、新しい在留資格として特定機能を創設しました。特定機能「介護」はこの制度の一環として設けられたものです。

 

特定技能・介護が制定された目的は、以下の通りです。

・介護人材の確保
・介護サービスの質の維持
・介護職員の負担軽減
・国際貢献

 

外国人の受け入れによって、急増する介護人材に対応しやすくなる他、人材の確保によって、在籍している介護職員の労働負担を軽減できる可能性があります。

 

また一定の技能や日本語のスキルを持つ外国人材を採用することで、提供する介護サービスの質の確保が可能になり、外国人の母国の経済発展への寄与も可能です。

 

この制度の導入により、2019年度から2023年度までの5年間で約6万人の外国人介護人材の受け入れが見込まれるなど、介護人材不足の解消と、高齢化社会における持続可能な介護サービスの提供に向けた重要な施策となっています。

特定技能「介護」の取得方法

 

特定技能「介護」の取得方法は、以下の4つです。

・介護の特定技能1号試験への合格
・介護の技能実習2号からの移行
・介護福祉士養成施設の修了
・EPA介護福祉士候補者として在留期間を満了

 

介護の特定技能1号試験に合格するには、以下の試験への合格が必要です。


・介護技能評価試験
・日本語試験

 

日本語試験では、日本語能力試験でN4以上もしくは国際交流基金日本語基礎テストでA2以上の成績を挙げることと、介護日本語評価試験への合格が必要になります。

 

介護の技能実習2号から移行する方法では、以下の条件を満たすことで特定技能・介護に移行可能です。

・技能実習2号を良好に修了していること
・技能実習の職種・作業と特定技能1号の業務に関連が認められること

 

介護福祉士養成施設を修了する方法では、試験を受けることなく特定技能「介護」の在留資格を取得できます。ただし以下の要件を満たす必要があります。

・日本語教育機関で6カ月以上の日本語学習が必要
・2年以上の養成課程で450時間以上の介護実習カリキュラムを修了する必要

 

EPA介護福祉士候補者として在留期間を満了する方法では、所定の期間を満了すれば特定技能「介護」の資格を取得可能です。

 

ここで紹介した取得方法は、それぞれ異なる背景や経験を持つ外国人材に対応しており、さまざまな人材の受け入れを可能にしています

 

なお特定技能「介護」で働く外国人の多くは、将来的に在留資格「介護」取得のために、介護福祉士の資格の取得を目指しています。実現すれば、より長期的な就労が可能です。

 

特定技能「介護」の外国人を採用するメリット

 

特定技能「介護」の外国人を採用するメリットは、以下の通りです。

・人手不足の解消
・地方施設での人材の確保
・専門性のある人材の確保
・国際貢献ができる
・職場の多様性の促進

 

特定技能「介護」の外国人を採用することで、介護業界の深刻な人材不足を補うことができます。特に若い労働力を確保しやすいことは、体力が必要な介護業務において大きなメリットです。

 

また日本では人口が首都圏に集中しやすいため、地方の介護事業所は人材の確保が難しいという課題を抱えています。外国人材は勤務地よりも労働条件を重視する傾向があるため、地方でも採用が決まりやすいというメリットもあります

 

さらに特定技能「介護」の外国人は、介護技能評価試験と日本語試験に合格しているため、一定の専門性と日本語能力を持っているのが特徴です。そのような人材を採用すれば、介護サービスの質を維持しやすくなるでしょう。

 

そして外国人介護士を採用すれば、彼らが母国に帰国した際に、日本の先進的な介護技術や知識を持ち帰れるため、国際貢献につながります。また職場の多様性の促進が期待できるため、異文化理解や国際的な視点が広がるといったメリットもあります。

他にもキャリアアップの可能性がある、日本の介護技術を取得できる、シフト制での勤務体制で時間の融通が利きやすいなど、外国人介護士にとっても採用されるメリットが多いといえるでしょう。

 

 特定技能「介護」の外国人を採用する際の注意点

 

特定技能「介護」の外国人を採用する際の注意点は以下の通りです。

・雇用形態が制限される
・訪問介護の人員としては採用できない
・受け入れ人数に上限がある
・労働条件に要件がある
・日本語の能力と介護技能の確認が必要
・文化やコミュニケーションの違いがある

 

特定技能「介護」の外国人労働者は、直接雇用のみが認められており、派遣雇用は認められていません。

 

介護施設は直接雇用契約を結ぶ必要があり、この点を誤ると、法的な問題が発生する恐れがあります。なお、特定技能「介護」の外国人労働者は、訪問系のサービスに従事できない点にも注意が必要です。

 

また介護事業者が受け入れられる特定技能1号の外国人労働者数には、上限があります。事業所単位で日本人などの常勤介護職員の総数が上限となり、事前に受け入れ可能な人数を確認した方がいいでしょう。

 

そして特定技能「介護」の外国人労働者の給与、労働時間、福利厚生などの労働条件は、日本人と同等以上にしなければならず、外国人労働者が不当な扱いを受けないようにする必要があります。

 

さらに特定技能「介護」の外国人労働者は、介護技能評価試験と日本語能力試験に合格しなければなりません。特定技能「介護」の外国人を採用できれば、一定の介護技能と日本語能力を持つ人材を確保できます

 

他にも外国人労働者の採用には、ビザの取得や各種手続きが必要になりますが、これらの手続きは煩雑かつ、専門的な知識が必要です。外国人の雇用に詳しい専門家や人材紹介会社のサポートを受けた方が良いでしょう。

 

また外国人労働者を採用する場合は、コミュニケーションや文化の違いを理解することも大切です。外国人労働者が職場にスムーズに適応するために、現場の日本人介護士が異文化理解やコミュニケーションスキルを習得するなど、組織全体での配慮夜間用の整備が必要になるでしょう。


特定技能「介護」と介護施設との親和性

 

特定技能「介護」の外国人労働者の受け入れを検討している事業所には、不安や心配を抱えているケースもあるのではないでしょうか。

 

しかし実際に外国人介護人材を受け入れている施設では、受け入れを決断したことが好影響を与えているケースが多いようです。

 

外国人労働者は、母国の家族のために働いているケースが多く、仕事に対する意識が高い傾向にあるといわれています。加えて外国人であることから、名前を覚えてもらいやすく、入居者からの信頼を勝ち取っているケースもあるようです。

 

また日本人の職員は、外国人労働者に仕事を教えることが、自分のスキルや知識を見直す良い機会となっており、足りない点を振り返り、基礎からやり直すケースもあるようです。

 

受け入れる事業所も、受け入れや研修を繰り返すたびに見つかる課題を修正することで、次の受け入れに生かすことができるでしょう。

 

 まとめ

 

今回は特定技能の介護の概要や、特定技能外国人を受け入れるメリット、デメリットを紹介しました。

 

人材不足の解消や専門性のある人材の確保など、特定技能外国人を受け入れるメリットは数多くあります

 

また職員の負担軽減や、母国語を使用した正確な意思伝達を期待して、特定技能の指導係として在留資格を持つ外国人を採用する事業所が増加しています。

 

介護福祉士養成施設である仙台医療福祉専門学校では、介護職に必要な知識やスキル、資格の取得を全力でサポートしており、現在日本人クラスと外国人留学生クラスに分かれて介護福祉士国家資格取得に向けて多数の学生が在籍しています。

 

2023年度介護福祉士国家試験では、留学生11名中7名が見事合格し、介護福祉士として就職をしています

 

介護福祉士を取得した留学生は、卒業後に在留資格「介護」に切り替えて永続的に在留・勤務が可能になるため、前述の通り特定技能の指導係やリーダー候補として採用をされるケースが増えています

 

また、仙台医療福祉専門学校は日本語学校様と連携をし、日本で介護福祉士として永続的に働くことを希望する外国人留学生と介護事業者様を繋ぐマッチング活動も行っております。外国人人材の採用を検討する介護事業者さまは、ぜひお問い合わせください。

 






この記事の監修者
仙台医療福祉専門学校

宮城県初の医療秘書科、宮城県初の介護福祉士養成課程の設置など、1980年開校以来24,000名もの卒業生を輩出する伝統校。
経験豊富な教員、職業に直結するカリキュラムなどを用意し、医療や福祉の現場で活躍するために必要な知識と技術を身に付ける「教育力」を誇ります。

【医療事務総合学科/医療事務学科/介護福祉学科/社会福祉学科】