コラム

介護業界の人材不足の原因は?解消するための対策も解説


公開日:2024/9/13   更新日:2024/9/13


今後、少子高齢化がさらに進んでいくと、介護のニーズは高まると考えられます。その一方で、介護業界の課題として人材不足が挙げられます。介護業界における人材不足を解消するためには、なぜ働き手がいないのかを把握することが大切です。

 

本記事では介護業界で人材不足が発生する原因や対策を解説します。


 


介護業界の人材不足の背景は少子高齢化

 

厚生労働省が発表した「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」によれば、将来的に必要となる介護職員の数は次の通りです(※)。

・2025年度:約243万人
・2040年度:約280万人


2019年度の介護職員数、211万人を基本とすると2025年度までには約32万人、2040年度までには約69万人を増やす必要があります。このように必要となる介護職員数に対して十分な人員を確保できていない背景には、少子高齢化が挙げられます。

 

少子高齢化により総人口は減少傾向にある

内閣府「令和4年版高齢社会白書」の発表では、2021年10月1日時点で、日本の人口は1億2,550万人でした。そのうち65歳以上の人口は3,621万人と全人口の28.9%を占めています。一方、生産年齢人口である15~64歳の人口は7,450万人でした。1995年の生産年齢人口が8,716万人だったため、16年で1,000万人以上、生産年齢人口が減少してしまっているといえます。

 

少子高齢化は今後も加速していくでしょう。2053年の日本の人口予想は9,924万人です。高齢化率も増加し、2055年には総人口のうち38.0%もの人が65歳以上になると予想されています。2055年の時点で予想される生産年齢人口は5,028万人 で、2021年からの減少数は約2,400万人です。このように高齢者が増加することで、介護のニーズが高まる一方、働き手である生産人口が減少することで、介護業界の人材不足が深刻化するでしょう。

 

 介護業界特有の人手不足の原因



介護業界で人手が不足してまっている背景として、少子高齢化が挙げられます。しかし少子高齢化による人手不足は、介護業界に限らず全ての業種においていえるでしょう。

 

介護業界における人手不足は少子高齢化だけでなく、次のような業界特有の原因も挙げられます。

・給与面の課題
・人間関係のストレス
・身体的な負担の大きさ
・採用の難しさ

 

給与面の課題 

介護業界特有の人材不足の原因の一つとして、給与面の課題が挙げられます。厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によれば、介護職員の平均給与額等(月給・常勤の者)は全体平均で31万7,540円 でした。

年収にすると、約381万円です。2022年の給与所得者の平均給与が約458万円 であることを踏まえると、平均よりも収入が下回っていることが分かります。このような給与面の課題が原因となり、新たな人材が集まりづらくなっていることが現状です。

 

人間関係のストレス 

介護業界は、人間関係によるストレスも発生しやすいといわれています。介護職員は業務を行う上で、介護職員同士だけでなく、医師や看護師、理学療法士といったさまざまな業種とコミュニケーションを取ります。当然、利用者や利用者の家族ともコミュニケーションを取らなければなりません。

 

介護職員の中には、利用者とのコミュニケーションや他の業種のスタッフとのコミュニケーションに、ストレスを感じてしまう人もいるようです。このような人間関係のストレスが原因で職員が離職すると、人手不足に陥ってしまう可能性があります。

採用の難しさ

介護業界は人材不足であるものの、採用が難しいという課題を抱えています。公益財団法人 介護労働安定センター「令和元年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査結果報告書」によれば、採用が困難で人手不足に陥っている介護施設のうち、「同業他社との人材獲得競争が厳しい」と回答した施設は57.9% と最多でした。

 

また同業他社だけでなく、他の業種とも獲得競争を繰り広げる必要があります。他業種から比較した場合、給与や身体的な負担などのイメージから、なかなか人材確保につながらない可能性があるでしょう。

身体的な負担の大きさ

介護業界は身体的な負担も大きい傾向にあります。「令和4年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」によれば介護業界の従事者の中で、労働条件の悩みとして「身体的負担が大きい 」と回答した人の割合は29.8%でした。特に入所型施設に勤務している介護職員は、44.8%が身体的負担に悩んでいるようです。

 

 

介護業界の人手不足を解消する3つの対策


介護業界における人手不足を解消する対策として、以下3点が挙げられます。

・働きやすい環境の整備
・イメージアップの施策を講じる
・外国人人材を採用する

 

働きやすい環境の整備 

介護業界の人手不足を解消するためには、働きやすい環境の整備を整えることが重要です。例えばITツールを導入すれば、事務系の業務にかかる介護職員の負担軽減が期待できます

 

介護職員の業務は、利用者の介護に対応するだけではありません。申し送りのための日報や書類作成も必要です。日報や書類作成を手書きやExcelで実施していると、介護職員の負担がかさんでしまいます。そのため日報や書類作成がスムーズになる、ITツールの導入を検討してみましょう。

 

また介護業務の負担を軽減するパワーアシストスーツや、見守りの負担を軽減可能な見守りカメラの導入などもおすすめです。

 

イメージアップの施策を講じる

介護業界における人手不足を解消するためには、イメージアップの施策を講じましょう。例えば施設の職員にインタビューをしてホームページで介護職の魅力を伝える、施設での取り組みを伝えるといった施策によって、介護業界のイメージアップが期待できます。

 

外国人人材を採用する

介護業界の人手不足に効果的なのが、日本人と同等の戦力となる外国人人材の採用です。介護業務ではある程度、身体的な力が必要です。日本に来て働きたいと考える外国人人材には若年層も多いため、ある程度の体力も期待できるでしょう

 

また外国人人材は、地方であっても採用しやすい特徴があります。日本人の場合、都心部に人材が流出してしまいがちですが、外国人人材であれば給与の他に社宅や寮といった設備を整えることで、施設の魅力を伝えやすいでしょう。

 

さらに外国人人材を採用するメリットとして挙げられるのが、日本人も見習うべきコミュニケーションの習慣が身に付いている人材が多いことです。

当たり前のように目線を揃えて会話ができる、積極的にスキンシップを取ることができる、また国によっては文化的に奉仕の精神が強く根付いている国もあるため、外国人人材の利用者に対する接し方を非常に高く評価している介護事業者も少なくありません。

 

外国人人材が介護に従事するためには、いくつかの要件を満たす必要がありますが、中でも在留資格「介護」を有している人材は介護士養成施設での経験を経ているのが一般的であるため、技術力や日本語能力を発揮してくれるでしょう。



介護業界の人材不足を解消して働きやすい環境を整えよう

 

介護業界は少子高齢化の影響でニーズが高まる一方で、働き手不足が深刻化しています。さらに給与面の課題や人間関係のストレス、身体的な負担が大きいなどの、介護業界ならではの原因によって、人手不足に陥ってしまう施設もあります。

 

介護業界における人材不足を解消するためには、働きやすい環境の整備やイメージアップの施策を講じるといった対策を講じましょう。また、外国人人材の採用を検討することで、人手不足の解消が期待できます。

 

外国人留学生が在籍している介護福祉学科のある仙台医療福祉専門学校では、外国人介護人材に関する個別相談会・説明会を開催しています。外国人人材を受け入れるには現場の体制整備も必要です。どのような受け入れ体制を整えれば良いのかなどの相談にも対応しています。将来を見据えて、ぜひ外国人人材の受け入れに向けて動き出してみましょう。

 

詳しい内容は下記ページよりご確認ください。






この記事の監修者
仙台医療福祉専門学校

宮城県初の医療秘書科、宮城県初の介護福祉士養成課程の設置など、1980年開校以来24,000名もの卒業生を輩出する伝統校。
経験豊富な教員、職業に直結するカリキュラムなどを用意し、医療や福祉の現場で活躍するために必要な知識と技術を身に付ける「教育力」を誇ります。

【医療事務総合学科/医療事務学科/介護福祉学科/社会福祉学科】