コラム

介護業界が抱える課題は?社会全体の課題や解決方法などを解説


公開日:2024/9/10   更新日:2024/9/13

少子高齢化や労働人口の減少など、さまざまな課題を抱える日本では、介護業界においても多くの課題を抱えています。

 

今回は、介護業界が抱える課題をテーマに、社会全体の課題や業界特有の課題、解決方法を紹介します。


 

介護に関連する日本の社会問題

 

日本は少子高齢社会に突入し、高齢者の増加や労働人口の減少など、さまざまな課題を抱えています。それは介護業界においても同じです。

 

ここでは介護に関する日本の社会問題について解説します。具体的なポイントは以下の通りです。

・高齢者数の増加
・高齢者の一人暮らしの増加
・要介護者数の増加
・老老介護・認認介護
・ヤングケアラー
・介護サービス提供のための財源不足

 

それぞれ詳しく解説します。

 

高齢者数の増加

日本では高齢者数が急激に増加しており、社会構造に影響しています。高齢者数の増加は、医療の進歩による平均寿命の延伸と、出生率の低下が主な要因です。

 

令和5年版高齢社会白書によれば、令和4年10月1日時点での65歳以上人口は3,624万人で、総人口に占める割合は29.0%となっています。

 

この傾向は継続し、2040年には高齢率が約35%に達すると予測されている他、医療・介護サービスの需要増加や労働力不足などの課題が生じると懸念されています。

 

高齢者の一人暮らしの増加

高齢者の一人暮らしが増加しているのも、介護に関連する日本の課題です。

 

核家族化の進行や未婚率の上昇、配偶者との死別などが主な要因です。

 

既出の高齢社会白書によれば、令和2年時点での65歳以上の一人暮らしが占める割合は、男性が15.0%、女性が22.1%となっています。

 

一人暮らしの高齢者は、孤立や孤独死のリスクが高く、緊急時の対応が遅れる可能性があります。地域社会や行政による見守りのための仕組みの構築が必要になる他、介護施設への入居者が増加する可能性もあり、介護事業者も何らかの対策が必要になるでしょう。

 

要介護者数の増加

介護に関する日本の課題として、要介護者の増加も挙げられます。

 

高齢者人口の増加に加え、生活習慣病や認知症患者の増加が主な要因です。

 

高齢社会白書によれば、介護保険制度における要介護または要支援に認定を受けた人は、令和2年度時点で668.9万人に達しており、平成22年度と比較すると約178万人増加しています。

 

要介護者数の増加により、介護サービスの需要増大や介護人材の不足、介護保険財政の圧迫など、介護分野に大きな影響を与えると見込まれています。

 

そのため、介護予防の推進や効率的な介護サービス提供体制の構築が急務となっているのが現状です。

 

老老介護・認認介護

老老介護や認認介護も、日本が抱える深刻な課題です。

 

高齢化の進行と核家族化により、介護の担い手が高齢者に集中していることが原因といわれています。

 

老老介護とは、高齢者の介護を高齢者が行うことで、認認介護とは高齢の認知症患者の介護を、認知症の高齢の家族が行うことです。

 

高齢社会白書では、要介護者などと同居している主な介護者の年齢のデータがあり、令和2年時点では男性の72.4%、女性の73.8%が60歳以上の老老介護となっています。

 

老老介護・認認介護は、介護者の身体的・精神的負担が大きく、介護の質の低下や介護疲れによる事故のリスクが高まるため、介護サービスの充実が求められています。

 

ヤングケアラー

ヤングケアラーの存在も、日本の社会問題の1つです。

 

ヤングケアラーとは、家族の介護や世話を担う18歳未満の子どもたちのことです。核家族化や高齢化、ひとり親家庭の増加などがヤングケアラー増加の背景にあります。

 

ヤングケアラーは、学業や友人関係、将来の進路選択などに影響を与える可能性が高く、支援体制の構築が急務となっています。

 

学校や地域、行政が連携して、ヤングケアラーの早期発見や、サポートの仕組みづくりが進められている状況です。

 

介護サービス提供のための財源不足

介護保険制度の財政状況の悪化による、介護サービス提供のための財源不足も、大きな課題となっています。

 

高齢者人口の増加によって、介護給付費が増大しているのが主な原因です。

 

財源不足の状態が継続された場合、介護サービスの質の低下や利用者負担の増加につながる恐れがあるため、持続可能な制度設計が求められています。介護保険料の引き上げや公費負担の増加、給付の効率化など、さまざまな対策が検討されています

 

今後は国だけではなく、地方自治体や民間企業などが連携して対策に取り組む必要があるでしょう。

 

 介護事業所の課題



介護業界の課題は、社会問題になっているものだけではありません。介護業界だからこそ発生する特有の課題も存在しています。

 

ここでは介護事業所が抱える課題について解説します。具体的な課題は以下の通りです。

・介護に関わる人員の高齢化
・労働環境の過酷さ
・社会的な評価の低さ

それぞれ詳しく解説します。

 

介護に関わる人員の高齢化

介護業界が抱える課題の一つが、介護職員自体の高齢化です。

 

若年世代の介護業界への参入が少ない一方で、ベテラン介護職員の高齢化が進んでいることが原因です。

 

介護の現場では体力を要する業務が多いため、高齢者の職員の負担が増大する恐れがあります。また若年層が少ないことから、技術や知識、経験の伝承が難しくなっています。

 

さらに将来的な人材不足が見込まれるため、早急な対策が必要です。

 

具体的には、若い世代に対して介護職の魅力を発信したり、介護職としてのキャリアパスを明確にしたりする必要があります。

 

労働環境の過酷さ

介護事業所が抱える課題として、労働環境が身体的・精神的に過酷であることが挙げられます。

 

慢性的な人手不足による長時間労働や夜勤、休日出勤が多いことに加え、身体的負担の大きい業務内容となっているのが原因です。

 

労働環境が過酷な場合、以下のような状況や問題を引き起こす恐れがあります。

・離職率が向上する
・職員のメンタルヘルスが悪化する
・介護サービスの質が低下する

 

いずれも事業所にとっては避けたい状況や問題といえるでしょう。

 

社会的な評価の低さ

介護職の社会的評価が低いことも、介護事業所が抱える課題です。

 

介護職の専門性や重要性が社会に十分に認知されておらず、低賃金や厳しい労働条件のイメージが定着していることが原因といわれています。

 

社会的評価の低さによって、以下の問題が発生します。

・新規人材の確保困難
・介護職員の自尊心やモチベーションの低下
・介護業界全体のイメージダウン

介護職の専門性や重要性の社会的アピールを行うなど、介護職を選択する若者を増やす取り組みが求められます。

 

介護業界の抱える課題に対しての解決方法


介護業界ではさまざまな課題を抱えており、解決するためにはコツコツ取り組む必要があります。

 

中でも、重要になる解決方法は以下の通りです。

・職員の待遇を改善
・DX推進により業務を効率化
・外国人労働者を採用

 

それぞれ詳しく解説します。

 

職員の待遇を改善

介護業界が抱える課題の解決策として、介護職員の待遇改善が挙げられます。

 

低賃金や長時間労働といった厳しい労働条件が、介護業界の人材不足の要因の1つとなっているためです。

 

人材確保と定着率向上のためにも、待遇の改善は不可欠といえるでしょう。

 

待遇改善のための施策として、以下の方法が考えられます。

・給与水準の引き上げ
・有給休暇の取得促進
・キャリアパスの明確化
・研修制度の充実

 

上記の取組によって、新規人材を確保しやすくなる他、職員のモチベーションが向上しやすくなるため、離職率の低下が期待できます。

 

また待遇改善によって、提供する介護サービスの質も向上するはずです。

 

DX推進により業務を効率化

DXの推進により業務効率化を図ることも、介護業界の課題の解決方法といえます。

 

DXとは、デジタル・トランス・フォーメーションの略称で、デジタル技術の活用によって業務プロセスや製品、サービス、組織、企業文化などを変革し、組織の優位性を確立することです。

 

特に介護業界において、DXの推進は業務効率化を大幅に進められる可能性があります。

 

介護現場では紙ベースの記録や手作業による業務が多く、業務効率が悪い面がありますが、以下のようなツールなどを導入してDX化を進めることで、職員の業務負担を軽減できます。

・介護記録システムの導入
・AIによる介護計画の作成支援
・IoTセンサーを用いた見守りシステムの導入
・ロボット技術の活用(移乗介助など)

 

業務時間の短縮や職員の負担軽減に加えて、介護サービスの質の向上や職員に対する効果的なケアも実現可能です。

 

外国人労働者を採用

外国人介護人材の採用は、人材不足を解消する有効な手段といえます。

 

日本では労働人口が減少しており、介護業界での人材確保が難しくなっているためです。

 

外国人労働者を採用すれば、人材不足を解消できる他、状況によっては長期的な就業を期待できます。

 

また外国人介護人材を採用すれば、以下の効果が期待できるでしょう。

・多様性の促進による職場環境の活性化
・国際的な視点の導入によるサービスの質の向上
・将来的な海外展開の可能性

 

現状として、外国人労働者の数は増加しています。制度をうまく活用し、効率的に外国人介護人材を採用できれば、介護事業所の課題の解決に大きく寄与するでしょう。


 

介護業界の将来性

 

介護業界の将来性として、以下のポイントがあります。

・介護需要が増加する
・雇用の安定性が高い
・DXなど技術革新の可能性がある
・社会的評価が向上する可能性がある
・新たな介護サービスが展開される

 

高齢化の進行に伴い、介護サービスの需要は今後も増加し続けると見込まれています-2025年には団塊の世代が75歳以上となり、介護ニーズは今後も高まっていくはずです。

 

介護需要が増えることで、雇用の安定性も担保されます。介護職はなくならない仕事の代表例で、AI化や自動化の影響を受けにくい分野でもあります。また慢性的な人手不足により、介護職の求人数も安定するでしょう。

 

さらにAIやロボット技術の導入により、業務効率化やサービスの質の向上、職員の負担軽減、新たな雇用創出を期待できます。

 

他にも介護の重要性に対する社会的認識が高まりつつあり、処遇改善や働き方改革が進められていることから、介護分野の社会的地位の向上や待遇の改善も見込まれています

 

そして在宅介護や地域包括ケアシステムの推進により、多様な介護サービスへのニーズが生まれている一方で、多くの課題が残されているのが介護業界の現状です。

 

持続可能な介護システムの構築が急務とされており、それが実現すれば、新たな介護サービスが登場する可能性もあるでしょう。

 

このように課題は深刻であるものの、大きな成長も期待できるのが、介護業界といえます。

 

まとめ

今回は介護業界が抱える課題や解決方法を解説しました。さまざまな課題が山積している状況にあり、解決には時間が必要です。しかし解決できれば大きな成長を期待できるのも、介護業界の魅力です。

 

今後も増大する介護ニーズに応えるため、国だけではなく、地方自治体や民間企業などの主体的な取り組みが求められています。

 

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この記事の監修者
仙台医療福祉専門学校

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