公開日:2024/7/20 更新日:2024/9/10
少子高齢社会が進んでいる日本では、働き手不足という課題を抱えています。働き手不足を解消するためには、外国人労働者の採用が一つの手段です。外国人労働者は、日本国内のさまざまな場面で活躍しています。これは一般企業だけでなく、介護施設においても同様です。
本記事では、介護福祉士として外国人を採用する際に、知っておきたい在留資格やメリットについて解説します。
介護の領域で活躍できる在留資格は、「介護」をはじめとした次の4つです。
・在留資格「介護」
・EPAに基づく外国人介護福祉士
・外国人技能実習
・特定技能
在留資格「介護」は2017年9月 に、専門的・技術的分野の外国人の受け入れと留学生の活躍支援という二つの観点に基づいて創設されました。在留資格「介護」に該当する活動は、介護福祉士の資格を持ち、介護もしくは介護について指導する業務に従事することが当たります。
在留資格「介護」は、介護福祉士の養成施設を経て資格を取得するのが一般的です。2020年4月1日 に在留資格「介護」の上陸基準省令が改正されたことによって、介護福祉士の資格を取得したルートにかかわらず、在留資格が認められるようになっています。
EPAとはEconomic Partnership Agreement(経済連携協定)の略です。EPAに基づく外国人福祉士とは、次の3カ国出身者が日本国内の介護福祉士取得を目標とした資格です。
・インドネシア
・フィリピン
・ベトナム
EPAに基づく外国人介護福祉士の候補者として滞在、就労が認められるためには、母国の看護学校卒業や介護福祉士の認定といった経歴が求められます。さらに以下の通り、出身国に応じた日本語能力も必要です(※)。
・インドネシア:日本語能力N4程度以上
・フィリピン:日本語能力N4程度以上
・ベトナム:日本語能力N3以上
外国人技能実習制度は、日本の技術を開発途上地域などに移転することで、該当地域の経済成長を担う人材育成を目的とした制度です。技能実習制度に介護の分野が加わったのは2017年11月 です。
技能実習制度において介護の領域に従事するためには、介護施設などで実習を重ねていく必要があります。実習中には定期的に基礎や実技試験の受験が必要です。
特定技能制度とは、国内で人材の確保が難しい分野において、専門性や技能を持っている外国人を受け入れられる制度です。特定技能制度における介護分野での受け入れは、2019年4月から受け入れがスタートしました。
特定技能制度によって介護に従事している間に介護福祉士の国家資格を取得できれば、在留資格「介護」に切り替えが可能です。
外国人が介護福祉士国家試験を受験するための主な手段は次の3つです。
・EPA介護福祉士候補者として介護福祉士国家試験を受験する
・特定技能や技能実習で3年以上研鑽を積んでから介護福祉士国家試験を受験する
・介護福祉士養成施設で知識やスキルを磨いてから介護福祉士国家試験を受験する
なお2024年における介護福祉士国家試験の合格率は、日本人を含めた全体で82.8% でした(※1)。外国人の合格率は、EPA介護福祉士候補者のケースのみ公表されています。第36回介護福祉士国家試験におけるEPA介護福祉士候補者の合格率は43.8% でした。
外国人介護福祉士を採用することで、介護現場における人手不足の解消が期待できます。採用当初はさまざまなサポートが必要になるかもしれませんが、採用した外国人介護福祉士が仕事に慣れていければ、人手に余裕が生まれます。
その結果、職員全体の長時間労働改善や有給休暇取得率の向上などにつながるでしょう。
また、奉仕の精神が根強く残る国で育った外国人人材は、現代日本人が失いつつある介護現場における当たり前のコミュニケーション能力がしっかりと身に付いている人が多く、日本人職員にとっても見本となるほど丁寧で親切な対応を見せる人材が少なくありません。さらに職員、利用者にとっての異文化交流にもつながることで、施設内の多様化にも寄与することが期待できます。
外国人の介護福祉士を採用するのであれば、在留資格「介護」がおすすめです。在留資格「介護」を取得している外国人介護福祉士であれば、次のようなメリットが期待できます。
・技能・語学に長けている
・就労期間に制限がない
・訪問介護にも対応している
在留資格「介護」を取得している人材なら、他の在留資格者よりも技能や語学に長けている可能性が高いでしょう。在留資格「介護」が認められるためには、介護福祉士国家試験に合格する必要があります。国家資格である介護福祉士の資格を取得しているということは、より高い日本語能力や技能を備えていることの証明になります。
介護はコミュニケーションが求められる業種です。在留資格「介護」を取得していれば、高い日本語能力によるスムーズなコミュニケーションが期待できます。また介護福祉士の資格を取得しているため、技術力も期待できるでしょう。中にはアルバイトの段階から介護施設に勤務しているというケースもあるため、即戦力の人材となり得ます。
在留資格「介護」は、就労できる期間の更新が可能で、更新回数には制限が設けられていません。一方、EPAに基づく外国人介護福祉士等の資格は、就労可能な期間に制限が設けられています。在留資格「介護」なら長期間にわたり介護福祉士として勤務可能であるため、介護福祉士として研鑽を重ね、スキルの向上が期待できるでしょう。
在留資格「介護」は訪問介護にも対応しています。今後、2020年から2050年にかけて、65歳以上男性の独居率は16.4%から26.1%、女性は 23.6%から29.3%までに増加すると考えられています。このような高齢者の独居率が向上することにより、在宅介護のニーズが高まることも予想されるでしょう。
在宅介護のニーズの高まりに備えて、訪問介護に対応できる職員の存在は大きなポイントです。外国人介護福祉士の中でも、在留資格「介護」であれば訪問介護にも対応できるため、従来の職員の負担軽減が期待できるでしょう。
在留資格「介護」を採用する際の注意点としては、在留資格「介護」を取得している外国人人材が少ない点が挙げられます。
厚生労働省の発表によると、2023年6月末時点での在留資格「介護」の在留者数は8,093名でした。一方で技能実習における介護分野での在留者数は、2022年6月末時点で15,011人でした。在留資格「介護」の創設は2017年9月と日が浅いため、資格取得者数が少なく、採用に当たっての競争率が高まる可能性があります。
在留資格「介護」の外国人人材の採用にかかる費用負担を軽減するためには、補助金制度の活用がおすすめです。例えば宮城県では「令和5年度宮城県外国人介護人材受入施設等環境整備事業」として1事業所等、1介護福祉士養成施設等当たり30万円の補助を行っていました(※1)。
外国人介護人材受入施設等環境整備事業は、年度や地域により補助額や条件などが異なる可能性があるため、毎年度状況を確認すると良いでしょう。
また補助金ではありませんが、外国人留学生の介護福祉士養成施設の学費や生活費を支援する制度もあります。例えば、社会福祉法人宮城県社会福祉協議会による介護福祉士修学資金貸付事業等が挙げられます。
この制度は、養成校卒業後に貸付を受けた自治体にある介護施設で5年間継続して勤務した場合、貸付金が返還不要となるもので最大164万円の貸付が受けられます。
この制度を活用することで、外国人留学生にとって在留資格「介護」を取得するための進学に対するハードルが大きく下がると言えるでしょう。
外国人が介護の分野で勤務するためには、在留資格「介護」やEPAに基づく外国人介護福祉士などの要件を満たす必要があります。外国人介護福祉士を採用することで解消できるのが人手不足です。在留資格「介護」は就労期間に制限がない上に、訪問介護にも対応できます。日本語能力と技術力も兼ね備えているため、人手不足解消が期待できるでしょう。
在留資格「介護」を満たした外国人を採用する際は、補助金制度の活用や学費・生活費の補助を検討してみましょう。採用にかかる費用を削減できる可能性があります。
仙台医療福祉専門学校の介護福祉学科には、外国人留学生も在籍しています。
入国段階や日本語学校在学中から介護施設とマッチングし、内定を出した留学生にはスポンサーとして学費や生活費をサポートする仕組みがあります。在留資格「介護」を有する外国人を採用したいとお考えの方は、ぜひご相談ください。外国人介護人材に関する個別相談会・説明会はオンラインでも可能です。
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